五木寛之『蓮如―聖俗具有の聖人像―』に関する話

ちょっと前ですが、読み終わりました。
蓮如とは日本史を勉強された方ならご存知のことかと思いますが、
(ちなみにぼくは日本史は全く勉強していないのでサッパリです)
親鸞の教えを一般に広めた僧侶のことです。
個人の信仰を確立したのが親鸞なら、それを民衆の信仰へと昇華
(昇華と捉えていいのかは微妙かもしれませんが)させたのが蓮如と言えましょうか。
例えば『線形代数学研究』というカタい本を書いたのが親鸞なら、
『7日でマスター 線形代数』を書いたのが蓮如という風に、
とにかく親鸞の教えを噛み砕いてわかりやすく広めたのが蓮如という人物です。
だ、そうです。この本は蓮如の軌跡を分析的に追う、というよりは、
(五木さん自身、あとがきで断ってあるのですが)五木さんにとって
蓮如とはどういう人物なのか、という思い入れの詰まった、
『わたしの蓮如』とでも呼べそうな本です。
理知よりも情を重んじる五木さんならではの書き口だと言えましょうか。
僕としては読みやすく、とっつきやすく、とても好感が持てました。


一応蓮如の生涯は一通り説明してあるので、蓮如の入門本としてとても
いいのではないかと思います。蓮如の信仰上の功績というのは、
民衆に広めたという以上は何も書かれていないのですが、
それだけに初めの本としてはとっつきやすくて良かったと思います。
蓮如が残したもので、民衆に向けた布教用の文章として、
書簡体の形式をとった『御文』というのがあるそうなのですが、とても興味を覚えました。
五木さん個人の体験と重ね合わせて書かれており、そのくだりは
「是非『御文』を読んでみたい!」と思わせるものでした。


みなさんも興味があれば、是非。
それではまた。

蓮如―聖俗具有の人間像 (岩波新書)

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