CRYPTOPSY『Once Was Not』

実に、5年振りのアルバムです(2回目ですね言ったの)。
どれほど待ちわびたことか…。はじめは、正直、少しう〜ん。と思った次第です。
4thまでの路線からいくと、さらに複雑に変態的に進化するかと思いきや、
そうではなく、どちらかというとブルデス*1
志向に転換したようです。変態的なリフは減り、よりへヴィーなリフが増えました。
前作のプログレ的要素は減退しましたね。少し3rd以前の路線に戻った感じでしょうか。
ですがリフの魅力そのものは以前より減ってしまったように思います。


今作のなによりの注目点は、Lord Worm(Vo.)が復帰したことですね。
やっぱりCRYPTOPSYはロード・ウォームじゃないと。ロード・ウォーム最高。
1st〜2ndの獣のごとき唸り声とは少し毛色が違います。
ちょっとがなり系に近くなったかも。それでもロード・ウォーム最高。
ロード・ウォームというとその人間離れした咆哮にばかり目がいきますが、
実は彼、作詞能力がものすごく高い。非常に詩的で病的な詩を書きます。
今作ではラテン語のフレーズや、賛美歌の一節なども登場するようですね。
非常に興味深いです。


で、それより気になるのはやはりフロ先生のドラミングなのですが。
今作もやはりというかなんというか、やってくれましたこの人。
凄まじい、まさに鬼神の名に違わないドラミングを披露しています。
メタル界において、パワー・スピード・テクニックの総合で
彼と肩を並べられるドラマーはなかなかいないでしょう。
デスメタルなんていう比較的狭い領域で活躍しているにも関わらず、
教則ビデオなんかも出していますね。デスメタルという範疇に収まらない人間
(あ、人間じゃなかった)だということでしょう。


前作がテクニック志向だったのに対し、近作はよりスピード志向のように感じました。
また最近の作品に較べて、ブラスト・ビートの割合がかなり大きいです。
そのためもあって、やはり最近のものより多少ストレートになったという印象があります。
しかしブラストのスピードはもはや以前と比べ物になりません。
5年間の空白は伊達じゃないです。速いのなんのって。


なお、サウンド・プロダクションは良好で、音圧と各パートの分離が高いレベルで
達成されています。ドラムも聞き取りやすいですね。
最近の作品の中では最も成功している音作りだと思います。
例えるならば、3rdの音圧と4thの音のクリアさを併せ持ったというべきでしょうか。
ドラムの音圧が強烈です。


ところで日本盤のタイトルが『Once Not Was』になっているのは何故なのでしょうか…。
どちらにしろタイトルの意味がわからないのですが(笑)
かつて存在しなかったもの、とか?


追記:
あとになって知ったのですが、Jon Levasseur(Gt.)が既に脱退していたようです。
メインソングライターだった彼が脱退したから、リフワークが冴えなくなったのでしょうか…。
一応、All songs by Cryptopsy with the contribution of Jon Levasseurとなっていますが。
かなり残念ですね。これからふつうのデスメタル・バンドになってしまいそうで心配です。
まぁフロがいる限りは安心でしょうが…。
ジョンはもともとプログレ畑のギタリストで、デスメタルのインスピレーションが
途絶えてしまったとか。うーん残念。彼の書くリフとソロはとても好きだったのに…。


Once Was Not

Once Was Not

*1:ブルータル・デスメタルの略です。