五木寛之『他力』に関する話

数日前ですが読了しました。


一番印象的だったのは「わがはからいにあらず」という親鸞聖人の言葉で、
これが他力ということを一言で言い表していると思います。
わがはからいにあらず、つまりこの世の中は僕たちから離れたところにある、
もっと大きな力によって動いている。だから物事がうまくいっていないときは、
いまは「他力の風」が吹いていないんだな、と思えばいい。
また事がうまく運びすぎているときは、むしろ立ち止まって、じっくり考える。
そして目に見えない大きな順風が吹いて、その他力が味方してくれたのだ、
と謙虚に受け止めるべきだ、と。そう五木さんは言います。


この他力の風という言葉がいいですね。
努力は滅多に報われない。
苦難は必ずしも乗り越えられるわけではない。
努力が実るものだとしたら、苦難が克服できるものだとしたら、
それは僕たちの力が足りないのではなく、
むしろ僕たちには逆らいがたい大きな力が働いているのだと考えてみる。
そうすることで、どうにもならないことに対して諦めや容認の姿勢を持つことができるし、
逆になにか報われた時には自ずと感謝の気持ちが湧いてくる。


大きな見えない力を感じることで、
このいのちも幾らか生きやすくなるのではないでしょうか。
なるように、なる。なるようにしか、ならない。そう考えたいです。


構成が少し雑然としていて読みにくいのが残念ですが、いい本です。
皆さんも興味がありましたら是非読んでみてください。
それではまた。

他力 (講談社文庫)

他力 (講談社文庫)