The Tallis Scholars『Live in Rome』(DVD)

Live in Rome [DVD] [Import]

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イギリスの古楽合唱団の大御所、タリススコラーズのDVD。
1994年、パレストリーナの没後400年記念に、彼が初めは聖歌隊員として、
後に楽長として活躍していたローマのサンタ・マリア・マジョーレ教会で
行われたコンサートを収録したものです。


収録曲は「Missa Papae Marcelli(教皇マルチェスのミサ)」
「Stabat Mater(スターバト・マーテル)」「Nunc dimittis(ヌンク・ディミティス)」
(以上パレストリーナ)、「Miserere(ミゼレーレ)」(アレグリ)など。


演奏は素晴らしいの一言です。見事な発声に見事なハーモニー。
輝きのある女声(アルトにカウンターテノール含む)に、
軽やかで伸びのあるテノール、ずっしりと支えのあるバス。
ここまでくると職人芸です。うまいな〜。
タリスコのバスはよく声が硬いと批判されるようですが、
ぼくはそんなに気になりません。むしろ線がはっきりしていいのではないかと。
ただ一人、バスのハゲのおっさんが、ものすごいビブラートがかかっているのは、
ちょっと気になりますね(笑)一人で突っ走ってる感じです。
この人もよく叩かれているようですが、曲に推進力が出るので、これはこれで
ナイスなのではないかと思います。声は素晴らしいですしね。


色々と勉強になるDVDです。同内容のCDもあるようですが、
合唱団員のひとは、絶対にDVDの方を買いましょう。
ものすごく勉強になります。みんな力が抜けているなあ、というのが
素直な感想です。完全に下半身だけで歌っている感じです。
口はあまり開けず、息はすべて鼻の方に流れている。力みがない。
また日本人が見習うべきは、母音の純正さ。
ぼくたちがラテン語の曲を歌うと、どうしても多少はカタカナ的な
発音になってしまうことがあると思います。
彼らのような純正な母音に到達するには相当な努力が必要でしょう。
(イギリス人にとっては自然な発音?)
明るい母音を深い発声で、というのが一つハーモニーを作る上での
大きなポイントなのだと思います。(バスのハゲのおっさんと
彫りが深いダンディーさんは暗めの母音ですが)
思えらく、口で無理に母音を作ろうとするのは間違いなのでしょう。
彼らはほとんど口を開けていませんから。
どの母音も基本的な口の形は一緒で、母音によって
口の開け方を微妙に、ごく微妙に変えているようです。
見習うべきところが沢山あると思います。


これだけ歌えたらさぞ楽しいだろうなあ、と思います。
どんなにうまいCDを聴くときも、演奏者の立場として聴いてしまいます。
年に何百回もコンサートをしたらさすがに疲れるでしょうが、
でもこれだけ素晴らしい発声とハーモニーがつくれたら、
どれだけ楽しいことか。うらやましい限りです。
こんな風に歌えるようになりたいです。


ところで指揮者のピーター・フィリップスですが、彼はテノールなんでしょうか?
童顔なのでそうなのかなあ、と思ったのですが、実際はバスとどっちなんでしょうか(笑)
ご存知の方は教えて下さい。ピーターさんの指揮はまるで気功のような指揮で、神秘的です。
絶対手からなにか出てると思うんですがどうでしょう。大量の気が出ているんじゃないかと。


合唱好きのひとはマストバイなアイテムです。
まだお持ちでない方は、いますぐCDショップに走りましょう。
お持ちの方は、いまいちど再生しましょう。


それではまた。